放射線の影響(歯・唾液腺・口腔粘膜)
口腔組織に与える放射線の影響について
医科や歯科の治療を受ける過程で、口腔内が放射線に曝されることがあります。
すると、その他の臓器と同様に、様々な影響が現れてくるのです。
歯科治療を行う上では、これらの影響についてきちんと理解しておく必要があります。
ここでは、歯、唾液腺、口腔粘膜への影響について、個別に解説していきます。
歯は、10Gy(グレイ)という吸収線量を浴びることで、象牙質形成障害が生じます。
また、歯の形成期に放射線に被曝すると、歯の形成障害を発症する可能性が高まります。
この被曝というのは、医科や歯科における放射線治療も含まれます。
・10Gyで象牙質形成障害が生じる
・歯の形成期の被曝は歯の形成障害の発症リスクを高める
唾液腺に対する放射線の影響は次の通りです。
・放射線治療の影響により障害が生じやすい
・大唾液線の中で耳下腺が最も影響を受けやすい
・放射線の影響を受けると唾液の粘稠度が高まる
・放射線治療後には口腔乾燥症を発症するケースもある
・多発性う蝕の発症原因となる
こうして生じた放射線治療による唾液腺の異常は、基本的に治療後も回復しません。
特に口腔乾燥症については注意が必要です。
放射線治療を受けると、口腔粘膜に様々な影響が現れます。
口腔粘膜に対する放射線の症状は、1週間あたりに浴びた吸収線量に応じてそれぞれ異なります。
・10Gy/週 → 味覚の低下
・20Gy/週 → 口内炎の発症
・50Gy/週 → 口内炎の発症(偽膜と疼痛あり)
唾液腺とは異なり、口腔粘膜に対する放射線の影響は、時間の経過とともに、ある程度回復していきます。
口内炎は完治することが多く、味覚障害に関しては、2〜3ヶ月も経過すれば元通りになります。
ただし、味覚障害の程度が高い場合は、障害が残ることもあります。