歯科国試過去問 104A-117
脱落外傷歯の代替保存液として牛乳が用いられる理由はどれか。(2つ)
a. 入手が容易である。
b. 脱灰抑制作用がある。
c. 変色抑制作用がある。
d. 長期保存が可能である。
e. 浸透圧が組織液と同等である。
*解答はページの一番下に掲載しています。
転倒による事故などで、歯が抜け落ちることがあります。
その際、すぐに牛乳に浸して保存することが望ましいです。
なぜなら、脱落した歯には歯根膜組織が付着しているからです。
脱落歯を元の位置に再植するには、この歯根膜組織が必要となります。
歯根膜組織をできるだけ正常な状態に保つには、一時的にでも保存液に浸けておく処置が重要となるのです。
・牛乳で保存する
・歯根膜組織を守る
不慮の事故で、歯が脱落した場合は、牛乳で歯を保存しておくことが最良であるといえます。
牛乳は、塩化カリウムや塩化マグネシウム、それから塩化カルシウムなどによって構成されているのですが、大切なのは浸透圧です。
牛乳の浸透圧は組織液とほぼ同じです。
組織液と等張でpHも近いため、脱落歯の保存液として適しているのです。
牛乳にはカルシウムが豊富に含まれているため、脱灰抑制作用を期待しているように思えますが、牛乳に求められているのは組織液と同じ浸透圧です。
・組織液と浸透圧が同じ
・脱灰抑制作用は求めていない
実は脱落歯には、専用の保存液が存在しています。
Hanks液と呼ばれるもので、牛乳よりも保存性に優れています。
また、生理食塩水や唾液も脱落歯の保存に適していますが、重要なのは入手しやすいかどうかです。
脱落歯の保存液
・牛乳
・専用保存液(Hanks液)
・生理食塩水
・唾液
歯が脱落するのは不意の出来事であり、可及的速やかに保存しなければいけません。
その時、この中で最も入手しやすいのが牛乳なのです。
ちなみに、唾液を活用する場合は、口腔前庭に脱落歯を保持するような形になります。
・牛乳は手に入りやすい
・口腔前庭に保持(唾液での保存方法)
さて、気になるのは、脱落歯はどのくらいの時間、保存可能なのかについてです。
専用の保存液であるHanks液を用いれば、最大で24時間、歯根膜細胞を保存することができます。
一方、牛乳の場合は数時間程度となっています。
・専用液は最大で24時間
・牛乳は数時間
解答
a ○
b ×
c ×
d ×
e ○