ステファン曲線〜歯垢pHの時間変化
ステファン曲線とは
ステファン(Stephan)曲線は、甘い食べ物や飲み物を口にした際に、歯垢のpHがどのように変化するかを表したものです。
具体的には、グルコースが10%含まれた液体で口をゆすいだ後、歯垢pHの時間変化を観察しました。
そこでまず始めに、口腔内の歯垢pHの通常値と、歯のエナメル質が溶解する臨界pHについて記載しておきます。
臨界pHの値を下回る(酸性に傾く)と、エナメル質に脱灰が起こり始めます。
・pH 6.8 が通常値(口腔内はほぼ中性)
・pH 5.4〜5.6 が臨界値(これを下回ると脱灰)
では、実際に行われた実験の結果をグラフで示します。
結論からいうと、歯垢pHはグルコースで洗口してから約2分後に最小値まで低下しました。
その後、1時間かけて、元のpHまで回復しました。
・グルコースで洗口後2分で最小pHまで低下
・1時間かけて本来の値(pH6.8)まで回復
グラフに示されている斜線の部分は、歯垢が臨界pHを下回っている部分です。
つまり、エナメル質の脱灰がいつ起こってもおかしくない環境ですので、斜線の面積が大きければ大きいほど、う蝕を誘発するリスクが高いといえるのです。
歯垢pHが回復するメカニズム
グルコースによって低下した歯垢pHは、次のような要素によって、元の中性付近(pH6.8)まで回復します。
・唾液による希釈、緩衝作用
・歯垢自体が持つ緩衝作用
・唾液中に含まれる尿素やシアン化合物(どちらもアルカリ性)
・乳酸を利用する菌による乳酸の分解