アペキソゲネーシスとアペキシフィケーション
生えて間もない歯は、歯根が未完成であることが多いです。
これを根未完成歯(こんみかんせいし)と言います。
この根未完成歯がう蝕になったり、外傷によって、歯髄に炎症が生じると、とても厄介なことになります。
その時に知っておくべき概念がアペキソゲネーシスとアペキシフィケーションです。
・アペキソゲネーシス apexogenesis
・アペキシフィケーション apexification
どちらも、日常生活上では決して耳にすることがない言葉ですが、根管治療を行う上では、必ず知っておかなければなりません。
通常の根管治療では、歯根が完成した永久歯を対象としているので、歯髄処置をした後に、根管充填をしても何ら問題はありません。
しかしながら、根未完成歯は、言ってみれば底が抜けたバケツです。
そこに根充剤を入れてしまうと、歯周組織へと漏れてしまいます。
そこでとられる処置がアペキソゲネーシスとアペキシフィケーションです
アペキソゲネーシスは、生活歯髄が残っている場合に適用されます。
その際、ラッパ状に開いている根尖を生物学的に閉鎖させます。
これは、生活歯髄の中に、象牙芽細胞が存在しているため、可能となります。
シンプルに言えば、天然の歯に限りなく近い組織で、根尖を完成させるのがアペキソゲネーシスです。
一方、アペキシフィケーションは、無髄の根未完成歯に適用されます。
無髄ですから、神経は壊疽や壊死を起こしています。
ですので、ラッパ上に開いた根尖は、セメント質によって閉鎖されることはありません。
そこで、アペキシフィケーションでは、水酸化カルシウム製剤を充填して、骨様象牙質や骨様セメント質でもって根尖を閉鎖します。
これは骨に限りなく近い組織と言えます。
つまり、アペキソゲネーシスとアペキシフィケーションの違いは、以下のようにまとめることができます。
アペキソゲネーシス
・歯髄が生きている
・根尖は天然歯に近い組織で閉鎖
アペキシフィケーション
・歯髄が死んでいる
・根尖は骨に近い組織で閉鎖
ちなみに、どちらの処置法にしても、根尖が閉鎖された時点で、改めて抜髄および根管充填を行うことが推奨されています。
そう考えると、アペキソゲネーシスでは、最後まで歯髄を残すことが目的ではないことがわかります。
要は、根尖をできるだけ自然に近い状態に持っていくために、行っているのです。
最後は抜髄してしまいます。
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