慢性潰瘍性歯髄炎の原因と症状
露髄すると慢性開放性歯髄炎へ
う蝕を放置していると、エナメル質を溶かし、象牙質を経て、やがては歯髄腔にまで到達します。
そうして露髄すると歯髄炎が慢性開放性歯髄炎へと移行します。
この慢性開放性歯髄炎には、以下の2種類が存在しています。
・慢性潰瘍性歯髄炎
・慢性増殖性歯髄炎
ここでは、慢性潰瘍性歯髄炎について説明します。
慢性潰瘍性歯髄炎とは、歯髄の一部がう窩に露出することで生じる炎症で、潰瘍形成を伴います。
歯髄の表面では非常に強い炎症反応が起こっています。
一方、歯髄の深部では潰瘍形成が進んでいきます。
潰瘍と糜爛(びらん)の違い
潰瘍とは、英語で「ucler」といい、上皮組織が欠損した状態を指します。
体表の皮膚や消化管を覆っている粘膜、それから眼球における角膜や結膜などの被覆上皮の欠損です。
欠損は皮下組織にまで及ぶため、様々な症状を引き起こします。
潰瘍に近い意味合いを持つ言葉に、糜爛(びらん)というものがあります。
糜爛は、欠損部位が上皮内に限局しています。
ですので、軽度の被覆上皮損傷とお考えください。
糜爛を英語では「erosion」と呼んでいます。
潰瘍と糜爛の違いは、以下のように欠損が及ぶ範囲で区別することができます。
潰瘍 → 皮下組織
糜爛 → 上皮内
慢性潰瘍性歯髄炎の原因は、う窩に露出した歯髄への細菌感染です。
神経や血管などの軟組織がむき出しとなっているため、感染が一気に広がります。
慢性潰瘍性歯髄炎になると歯髄が開放されているため、内圧の低下が起こります。
その結果、自発痛を始めとした痛みがほぼ消えてなくなるのです。
ただし、誘発痛は残ります。
慢性潰瘍性歯髄炎の症状は、以下の通りです。
自発痛
なし
誘発痛
冷温刺激、う窩への食片圧入、探針による触診
→ 一過性の疼痛が生じる
打診痛
なし(あっても極めて軽度)
電気診
閾値はわずかに上昇するがほぼ正常
慢性潰瘍性歯髄炎の治療では、原則的に抜髄が行われます。
既に露髄し、神経の深部にまで細菌感染が広がってしまっているため、歯髄を温存することは不可能に近いのです。
けれども、根未完成歯の場合は、状態によっては生切(せいせつ)が行われます。
ちなみに生切とは、生活歯髄切断法のことで、歯根部歯髄を残す治療法です。