みんなの歯学〜歯学部1年生でも理解できる!

マラッセの上皮遺残(ジョウヒイザン)

マラッセの上皮遺残

マラッセの上皮遺残とは

 

マラッセの上皮遺残(Malasse epithelial rests)とは、ヘルトヴィッヒ上皮鞘が小塊状に分断されたものです。

 

歯根が完成されたのちも歯小嚢付近に存在し続けているため「遺残」という名前が付けられています。

 

大雑把に表現すると、歯根形成時に不要となった上皮組織の残骸といえます。

 

・小塊状に分断さたヘルトヴィッヒ上皮鞘

 

・歯根形成時に不要となった上皮組織

 

ただし、決して死んでいるわけではなく、刺激が加わることで色々な反応を見せます。

 

詳しくはポイント3で解説します。

 

マラッセの上皮遺残が形成されるプロセス

 

歯根が形成される過程では、ヘルトヴィッヒ上皮鞘という組織が下へ下へと伸びていきます。

 

これは歯根の設計図となっており、歯根の長さ、彎曲、厚さ、根の数などを決定していきます。

 

そんな上皮鞘がある時を境に歯頸部付近で断裂されます。

 

断裂された上皮鞘は小塊状になって歯根面から離脱していきます。

 

これがのちに、マラッセの上皮遺残となります。

 

では、上皮鞘の断裂によって生じたブランクは、どうなってしまうのでしょうか。

 

小塊状になった上皮鞘が歯小嚢付近に到達すると、今度は歯小嚢から間葉細胞がブランクへと移動していきます。

 

そこで、セメント芽細胞に分化してセメント質を形成していくのです。

 

一方、マラッセの上皮遺残は生涯、歯根膜内に残り続けることになります。

 

このように、現象だけ見るとセメント質を作形成する上で邪魔となった上皮鞘が、歯根面から排除されたのがマラッセの上皮遺残と考えることもできます。

 

以上の流れを簡潔に表すと、以下のようになります。

 

ヘルトヴィッヒ上皮鞘の形成

 

 

上皮鞘が歯頸部付近で断裂

 

 

小塊状になって歯根面から離脱し歯小嚢付近へ

 

 

歯小嚢から間葉細胞が歯根面へ

 

 

間葉細胞がセメント芽細胞に分化してセメント質を形成

 

 

マラッセの上皮遺残は歯小嚢付近に残る

 

*ヘルトヴィッヒ上皮鞘については、個別ページで詳しく解説しています。

 

マラッセの上皮遺残の働き

 

マラッセの上皮遺残は静止、あるいは休眠しているような状態にあるといえます。

 

この休眠状態は、細菌の内毒素や感染根管経由で抗原性物質が接触してきた際に解かれます。

 

・細菌の内毒素

 

・根管経由の抗原性物質

 

具体的には、休眠状態が解除されて増殖を開始するのです。

 

その結果、歯根嚢胞の裏装上皮となることがあります。

 

その他、過大な咬合圧などが加わることによって、熱ショックタンパクを分泌するなどの作用もあります。

 

・歯根嚢胞の裏装上皮を形成

 

・咬合圧により熱ショックタンパクを分泌

 

つまり、マラッセの上皮遺残とは必要に応じて様々な作用を発揮し、歯周組織の恒常性に役立っているといえるのです。

 

 


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